卒論、待機児童について書きたい。どうやって?
少子高齢化が進み、労働力の確保を必要に迫られている現在の日本においては女性の労働力が非常に重要であり、そこでどうしてもクリアすべき問題が子育てのお話になります。そして、どうしても外せない課題として出てくるのが待機児童になります。この待機児童についてどのようなアプローチで卒論を書いていくべきか、いくつかのポイントでご紹介していきます。
●待機児童の定義
まずは待機児童の定義からです。「保育施設に入所したいが入所できずにいる子供」を全て待機児童とカウントするわけではありません。正しく表現するのであれば「保育施設に入所申請をしており、入所の条件を満たしているにもかかわらず入所ができない状態にある子供」を指します。しかしながら実際には上記の定義から外れてしまう隠れ待機児童も存在します。しかしながらこの例外については各自治体の判断に委ねられるところもあり統計数字よりもさらに多く存在していると考えても良いでしょう。卒論を書くにあたってはまずこの待機児童の定義、例外を含めるとさらに多く存在すること、そして人数を明確にすることが大事だと思います。
人数についてですが厚生労働省の発表によればここ数年間で少しずつ待機児童数も減りつつあり、約20,000人近い子供たちが保育園の空きを待っているとされています。統計を眺めるだけだと待機児童の人数は減っていると捉えられても仕方ありません。論文を書くにあたって大きな課題としては統計的には待機児童は減っているように見えるが、実態としてはまだまだ賄えていないと言う論調で課題定義をすることが1番だと思います。
ではここからは待機児童についての卒論を書いていくにあたっての現場の課題、そして解決策の案を簡単に紹介していきます。
●なぜ待機児童が減らないのか
共働き世帯の増加や女性の社会進出が過去より進んだこともあり、保育ニーズが高まっていることが最初の理由に挙げられます。また核家族化が進むことによって祖父母の保育参加が難しくなっていること、さらには保育士の確保が追いつかず保育所を整備しても人員が確保できないことが大きな課題です。
●保育士の課題
保育士の人員不足については非常に大きな課題だと言われています。厚生労働省から給与の処遇改善や働く環境の改善などが具体的に提示されています。しかしながら現場ではまだまだ具体的に効果は出ていません。実際のヒアリング、またはテレビのドキュメンタリー番組などで聞く限りそもそも国策として正しいのかどうか、現場にプラスに働くのかどうかは疑問を感じている方々が多いでしょう。
●地方における待機児童問題
都市部においては共働き世帯も多くニーズが高まるため保育所の待機問題が少しずつ解決しつつあると言えるでしょう。しかしながら地方では逆にニーズが高まらず、むしろ可塑化で保育園が減った結果保育園に入園しづらくなると言うケースも出てきています。また地方に行けば行くほど保育士が都市部に出てしまうので確保も課題になります。また、地方では給与水準も低くなりますので必然的に保育所に預けられるだけの年収が賄うことができず待機児童が増えてしまいます。論点としては都市部と地方の待機児童における課題が異なることを挙げていけば良いのではないかと思います。そして様々な対策が挙げられていますがどのような対策が実際に正しいのか、自分なりの推論が必要になります。
●厚生労働省の対策について
実際に厚生労働省から発表されている待機児童解消に向けた対策を論文の中で紹介しそれぞれの課題と改善点を上げていくことが良いのではないでしょうか。
大きな取り組みとして2018年以降は「子育て安心プラン」と言う新たな計画に取り組み2020年末までに待機児童を解消する方針を立てています。
●子育て安心プランの目標に対する課題提起
そもそも厚生労働省の目標に対して現実的かどうか、このアプローチが必要だと思います。まず、22万人とも推定される待機児童を3年間で解消するための具体策が薄いこと、そしてどんな課題があるのかを自分なりにアプローチして記述することが大切です。
さらに長期的なビジョンとして2022年までに32万人の受け皿を整備すると宣言していますが、5年間でこれだけの受け皿を用意することが施設の面、法律の面、何よりも若年層の労働力不足が叫ばれる中、どれだけ現実的であるか、そして現実とどれだけ乖離しているかをアプローチすることも大事だと思います。
さらに厚生労働省として支援パッケージを具体的にあげていますがこれらが現実とどれだけ離れているかも論点になってくるかと思います。保育の施設の受け皿の拡大や人材確保、保育の質の確保、少子化が進む中で持続可能な保育制度の確立といったパッケージで課題を解決しようとしていますが課題そのものは捉えていてもその解決策が正しいとはなかなか考えられません。
●自分なりの待機児童解消への解決策
もちろん最後は自分なりの提案を行うことが卒論の目的になってきます。そこで参考にしたいのは実際には保育士の資格を持っていても働いていない方々が3割から4割と言われています。このような方々をどのように雇用に結びつけることができるか、さらに若い方々から人気のない保育士の仕事をどのようにすれば魅力的にすることができるか。休眠資格の方々も若年層の方々も給与の上積みだけではなかなか現場で頑張ろうと思えないのが現在の厳しさです。
現場に待機児童を丸投げするだけではなく、自治体や両親も一緒になって課題を解決する必要があると考えられます。いかに仕組みを整えようとも中身が伴わなければ地域ごとでその実態には差が出てきます。
特に過疎化が進んでいく地方ではこれからも待機児童の問題は人口の減少と反比例して深刻になっていくはずです。自分なりのアプローチでこのような課題をどのようにすれば解決することができるか、卒論の中で調べていくことが良いのではないでしょうか。
待機児童に関する現在の政策が正しいとは言い切れない中、卒論で仮説検証を行うことができれば、意義があるでしょう。